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ナチュラルチーズコラム

帯広畜産大学
平田 昌弘 教授

アジア、アフリカ、ヨーロッパの3大陸での牧畜と乳文化を25年以上にわたって研究。「ユーラシア乳文化論」などの著書の執筆も手掛け、世界各地の酪農を中心とした地域創生についての調査・研究にも取り組んでいる。

ヨーロッパの国々に学ぶ
北海道とナチュラルチーズの未来。

 世界の食文化にヨーロッパがもたらした貢献。それは〝熟成〟でしょう。ワインにウイスキー、ハム、そして、チーズ。そのどれもが〝熟成〟によって味わいに深みがもたらされています。熟成チーズは、古くからチーズが作られてきた西アジアやモンゴルにも存在していなかったものでした。
 ヨーロッパでのチーズ作りは、そもそもの原材料であるミルクをとても大切にしています。特に熟成チーズの本場であるフランスやイタリアでは、「いいミルクがあってこそ、いいチーズができる」とミルクに対する意識が高く、地域に育つ草資源で乳牛を育てることで、その地域でしか作れない良質なミルクを生産し、チーズもそのミルクを使って作られています。いわゆるテロワール(独特な品質を形成する自然環境や技術・文化)がチーズ作りにも根付いており、だからこそ、同じ製法でも地域ごとに違う個性のチーズが生まれているのです。
 世界的なコンクールで賞を獲るまでに成長した北海道のナチュラルチーズも、そうしたヨーロッパの取り組みが今後の参考になるのではないでしょうか。チーズを作る酪農家は、必ずしも効率を求めるばかりではないと思います。地域に生えている草資源を主に食べさせてミルクを作ると、乳量は落ちます。ですが、その分〝地域性〟という付加価値を高めたチーズに加工して販売する。そのチーズを地域で消費する循環ができると、自分たちで外に持ち出さなくても、フランスやイタリアのようにファンになってくれたお客様が地域に訪ねてくるようになります。また、スイスでは放っておくと荒れてしまう自然を、放牧を通して管理するといった酪農家が景観づくりや環境保全にも貢献しています。酪農やチーズ作りは、そうした地域を持続・発展させる力を持っており、特に限界集落といわれている地域の大きな武器にもなってくれることでしょう。
 もちろん、そのような未来を迎えるには、私たち一般消費者が生産者や地域にあるチーズを知り、買い支えていくことが必要不可欠です。今後も北海道の地域が発展していくためにも皆さんで支えながら、さらに多様性あるナチュラルチーズを楽しめる日が来ることを期待しています。