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ナチュラルチーズ エッセイ 林美香子

林 美香子さん

【プロフィール】
北海道大学農学部卒業後、札幌テレビ放送アナウンス部入社。 退社後、キャスターとして活動。ラジオのパーソナリティなど放送の仕事を中心に、「食と農」をテーマとした執筆やシンポジウムのパネリスト、コーディネーターとして活躍。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科特任教授。主な著書に「農業・農村で幸せになろうよ」(安曇出版)、「農村へ出かけよう」(寿郎社)などがある。

essay

美味しいチーズは美しい景観の中で作られる

 海外から多くの観光客が訪れる日本。なかでも北海道の人気は高く、観光客が訪れたい場所の上位に常に挙げられる。その要因はやはりなんといっても美味しい食べ物。新鮮で品質の高い農産物や海産物、そこから生まれる加工品など、北海道の食は世界に誇る魅力だといえる。そして最近では、北海道の美しい景観を味わうことも旅の大きな目的となっているようだ。

 変化に富んだ四季と多彩な風土を持ち、広大な平原や山並み、森や湖、海や砂丘、緑の丘陵地、豊かな田園風景、そして牛たちがのんびりと草を食む放牧風景など、北海道の景観は、そこに住んでいる者にも癒しと感動を与えてくれる。
 そして近年、産物と景観、この二つの要素を関連づけて地域の魅力をアップさせ、活性化させようという考え方が登場してきた。

 フランス発祥の「味の景勝地SRG(仏=Site Remarquable du Gout)」。「美味しい農作物は、美しい景観の中でこそ育つ」と提唱する、ソルボンヌ大学の地理学者、ピット教授の研究成果に基づき整備され制度化されてきた。現在、フランスでは山のチーズで有名な「ボフォール」や、一流シェフがこぞって使う塩の産地「ゲランド」など、71ヶ所の地域が選定を受け大勢の人が訪れている。さらに「味の景勝地」は、少量だが高品質なものを生産する人たちを買い支え、食べ支えながら、地域を経済的に応援するという側面も持つ。そこには経済性だけを優先せず、郷土の食文化と景観を守ろうとするフランス人の心意気が伝わってくる。

北海道のナチュラルチーズも、一幅の絵画のように美しい牧場や農場というバックグラウンドを持ち、そこでのびのびと育てられた牛から搾られる、おいしくて良質なミルクから作られている。それらの景観を生み出してきたのは、酪農家たちの汗と努力の営み。まさに産物と景観が一体となった「味の景勝地」がそこにある。美味しいものはそれ自体が美しい表情をしている。だから北海道のナチュラルチーズは、どれも美しく、美味しい。チーズも景観も、応援していきたい。